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アニタ ディレクターズカット版 [映画]

香港の歌手、梅艶芳(アニタ・ムイ)の伝記的映画のディレクターズカット版が、ディズニープラスにあったので見てみた。


もともとは映画だったものをかなり長くしているらしい。いずれにしても久しぶりにまともな広東語を話している映画を見た。そして、セットや衣装も美しい映像で当時を忠実に再現しているので、画面を見ているだけで楽しい。香港映画も死んだ訳ではなかった。


アニタムイは90年代を中心に、香港では大スターだった。ただ、個人的には特別好きではなく、どすの効いた声で歌う歌手で、映画には頻繁に出演する女優、そして個性的なメイクや衣装などで自分を演出している人という印象。2003年に癌で亡くなっていて、そこのとはニュースでも知っていたが、まだ若いのに、あんな大物がなくなるなんて、と驚いたことをを覚えている。


アニタが近藤真彦と交際していたことを私はこの映画を見るまで知らなかったので、正直言って、格が違うし、なんで近藤真彦?と思った。実力も華も経験も兼ね備えたアニタが、ただのアイドル歌手に惹かれたとは今でも信じられない。いずれにしても、相手に幻滅する前に終わった短い恋だったので、アニタにとっては良い思い出だったようだ。


それから、病気のこと。最後のコンサートの映像では、歌も力強いし、特別痩せてもいない。それなのに、45日後に亡くなったというのが解せなくて、少し調べてみた。


子宮頸がんで亡くなっているのだが、1999年には腫瘍が見つかっていて、良性だと言われていたらしいのが、亡くなる1年前に悪性とわかり、手術は1回もせず、最初は漢方治療、亡くなる4か月前になって初めて抗がん剤を始めたらしい。もっと早く治療していれば、腫瘍を丁寧に診ていれば十分治ったのではないかと思う。ただ、亡くなる45日前まで、8回の単独コンサートを行い、舞台と結婚するというトリの白いウェディングドレス、「バイバイ」と元気に手を振り舞台を降りる最後の姿には、アニタの人生を「伝説」に昇華させるドラマ性があって、これは最初から標準治療を行ってたらもしかしたら得られなかったかもしれない。


(追記)第1話くらいで、アニタがナイトクラブで歌っているとき、マネージャーが今日の客は、「台湾人〇組、日本人〇組」とアニタに言うのだが、ここで字幕は「日本人」と訳しているが、実は、gaazai、加仔、ガーザイという日本人に対する蔑称が使われている。ガーの漢字がわからなかったので、ChatGPTに聞いてみたら、「差別的な表現であるため使用を避けるよう」お勧めされた。


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ヤクザと憲法 [映画]

東海テレビ作成のドキュメンタリー映画。大阪のヤクザの事務所内に長期にわたり密着して、「ここまで見せていいの?」というようなリアルなヤクザの世界を私達一般人に伝えてくれる。冒頭に、撮影の3条件が伝えられる、1取材報酬なし 2収録テープは事前にみせない 3原則モザイクなし。 

当然、密着されるヤクザ側には目的がある訳で、それは、暴対法などの暴力団への締め付けが「人権問題」だと世間に訴えたいということなのだろう。だから、この映画のタイトルも「憲法」がくっついている訳だが、全体として、「憲法」や「人権」問題は深くは提起されていない。(少なくとも私には)暴対法がヤクザの人権侵害だ、と主張するヤクザがいるのだな、と分かる程度である。

憲法14条法の下の平等の条文も写し出される。ただ、法規制で、暴力団員が銀行口座を作れないということなどが、法の下の平等に反しているとは思えない。そもそも憲法14条で定めているのは、性別とか、民族とか、部落出身者とか、親の職業とか、本人では選びとることができない事情を原因とする差別の禁止のみだ。 ヤクザになることを選択した以上、現在の法規制は、憲法14条違反にはならないと思う。(憲法問題になるとすれば、親がヤクザだから、幼稚園に通えない、という子供への差別の問題だけだ。それも、公立幼稚園だった場合だけに問題になるだろう。)

取材する側は相当頑張っている。ほぼ最後に取材側は、人権問題だと訴えるヤクザの組長に「それなら、ヤクザを辞めればいいとは考えないのですか?」と尋ねるが、組長の答えは「どこが受入れてくれるねん。」だ。それで映画は終わる。でも、この「どこが受入れてくれるねん。」というのはヤクザを辞められない理由としては、非常に弱い。この程度の理由では、犯罪を業としていることを、正当化できない。これは誰でもちょっと考えれば分かる。誰かに雇ってもらわないとヤクザ辞められないってこと?どんな仕事も本当にない?元ヤクザで正業についている人はいない?そんなはずはない。

こういう言訳にならない言訳を言わせて、そこで映画を終わらせた製作者には、この映画を製作するにあたり、ヤクザに利用されて終わりにはしない、という意気を感じる。 でも、この映画をみて、ヤクザ側に都合のよいメッセージだけ受取ってしまう人も多いと思う。そのように見せかけて、難しいバランスをとりながら、ヤクザに利用されただけではない映画を作った製作者側は、偉いと思う。

 


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Love Song (甜蜜蜜) [映画]

1996年の香港映画。何故今まで見ていなかったのかというと、たぶん、黎明があまり好きじゃないからなのだが、張曼玉が出ているので見てみた。

男女の主人公2人とも、1986年頃に大陸から香港へやってきたという設定で、当時、香港の人が大陸出身者を見る目とか、大陸出身者が香港を見る目とか、その辺は相当リアルに出来ている。1996年というと、香港は返還直前で、その頃に香港映画としては異例の2時間近いこの恋愛映画は、ある意味、返還への不安をあえて見ないようにしているようにも思える。恋愛ものとしては、別に面白味もなく、黎明は思ったほど悪くはないが、張曼玉の魅力もそんなに出せていないし、やはり、1990年代の不安と混沌の時代の香港の、ある大陸出身者たちの風景としては、出色であるというところだ。 


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若松孝二の原発映画 [映画]

映画監督の若松孝二が交通事故で死んだ。思っていたより、実は結構高齢だった。死ぬまでに、原発事故の映画を撮りたいと言っていたそうだ。どんな映画になったのだろう。見たかった。残念だ。
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海上花 [映画]

台湾の映画監督、候孝賢の映画。松竹が出資したらしい。清朝末期かその後くらいの上海の妓楼を舞台にした小説を題材にしたものだという。

李安と王家衛に続いてなのだが、資金が潤沢になると、作品はつまらなくなるらしい。衣装や道具はすばらしい。全編ほとんど上海語(台湾映画なのに)というのと、 長まわしでほとんどカットがないのも、意欲的だ。冒頭いきなり10分くらいの長まわしで、しかも多数の登場人物が間断なくせりふを話すので、驚く。オムニバス形式なのだが、インタビューで監督が「大スター」と言っているのが、梁朝衛と羽田美智子なのだ。梁朝衛はいいとして、羽田美智子って、スターだった?この2人だけの会話の時だけ広東語を話しているが、おそらく、梁朝衛の上海語は吹き替えで、したがって広東語を話しているときだけ、活き活きして聞こえる。

お金かけました、というだけの映画で、ただ、妓楼の風景を楽しむのには良い。昔、神戸の小さな映画館か公民館へ見に行った「冬冬の夏休み」が、予想外に面白くて、満足ながら帰ったことを思い出す。あっちの方がずっとよかった。


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イザベラ [映画]

2006年頃の香港映画。原題も「イザベラ」だが、なんとイザベラは犬の名前だ。

返還前のマカオを舞台にやさぐれた中年の警官と、その娘の話。いきなり、中年の警官は、売春婦を娘と知らずに買ってしまうという、挑戦的な展開となる。役者も結構良いが、マカオが汚いのだが、その汚いところが魅力的な映像になっていて、良い。マカオって、そう言えば、リスボア(カジノ)か、例の広場と教会か、離島の小綺麗なホテルやカフェしか行ったことがなく、余り普通の人の住んでいる町には行ったことがなかったと気づいた。

王家衛の亜流のようには見えるが、商業ベースにはたぶん乗りきれない、こういう映画を撮る人がまだ出てきているのかと重うと、香港映画も捨てた物ではない。


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キャタピラー [映画]

若松孝二監督の2010年の映画。日中戦争で負傷して「いも虫」のような体になってしまった夫と暮らす妻を描く。(私が子供のころはまだ、ちょっと大きな駅の前などには「傷痍軍人」といって、白装束を着た手や足のない人たちが何人か座っていて、施しを募っていたのを思い出した。そういえばいつの間にかああいう人たちはいなくなった。)主演の寺島しのぶは海外でこの演技で賞を取ったが、ほとんど、彼女一人で演じているような映画だ。内容的には退屈なのかと思っていたら、いも虫の夫と、妻の関係が、少しずつ変化していく様が意外と面白く、飽きずに見ることができた。まあ、このあたりは監督の得意とするところなのだろう。

一方で、社会的メッセージ性も非常に強くて明確である。最後に広島と長崎の原爆のきのこ雲の映像が大きく映し出される。 もちろん戦争の馬鹿馬鹿しさと惨さというのもあるのだろうが、2010年製作のこの映画の、きのこ雲と原爆による死亡者数を示すテロップを、2011年の夏に見ていると、世界で唯一の被爆国であるにもかかわらず、原発でまた放射能をまき散らしてしまったことが思い起こされる。結局、日本人は繁栄を夢見るうちに、原爆の恐怖を忘れてゆき、アメリカ軍に核を持ち込ませたり、原発の危険性を軽視したりしてきたから、こんなことになったのだろう。だから、今からでもこの映画はもっと見られるべきだと思う。


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息もできない [映画]

去年の韓国映画。キネ旬の外国映画のベストだというので期待して見たが、暗い、重い、そして、長い・・・・。ついでに言うと、救いも(ほとんど)ない。後半、きっとこういう結末になるのだろうと予想できてしまう。

チンピラの男が女子高生と出会って、少しずつ親しくなるという話。主演のチンピラ男が監督も脚本も全部やっているらしい。確かにとってもうまい。チンピラの卑しさ満開なので、見ていてちっとも楽しくない。暴力の連鎖も、重い。女子高生もうまい。役者がうまいだけに、リアルすぎて、しかもテーマが重すぎて、見るのがつらい。こういう映画を評価する人は映画に楽しみを求めないんだろうか。もう一度見たい映画が良い映画ではないのか。

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ハピネス [映画]

2007年の韓国映画。監督は「恋愛映画の巨匠」らしい。病気の男女が療養所で出会う、という設定だということは分かっていたので、「不治の病」系のあざとい話かと思い、観るのを逡巡した。美女が車いすとか、美男が聴覚障害とか、不治の病とか、そういう設定でお涙頂戴したい話は、基本的に好きではないのだ。それでも、観たのは、ファンジョンミンが主演していたからなのだが、観てみたら、思っていたような映画ではなかった。

まず、あざとい設定ではあるのだが、そこで涙を絞らせようという映画ではなかった。女性の方は、病気で死ぬのだが、感傷的に描いてはいない。それから、恋愛映画だと思っていたら、そうでもなかった。私には、この作品は、男女2人の恋愛を描いたというより、自分が何をしたらよいか分からない愚かな男が、もがき苦しむ様を、恋愛を通して描いたものに見えた。


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ラスト、コーション [映画]

台湾の映画監督、李安の作品で、香港の俳優、梁朝偉が主演している。李安の作品は、初期のころの「飲食男女」や「ウェディング・バンケット」はそこそこ面白かった。この作品は、太平洋戦争当時の、上海と香港を舞台にしているもので、お金がかかっているのが分かる。映画監督って、お金がかけられるようになって、大がかりな作品を撮るようになると、たいてい余り面白くなくなってしまうのは残念だ。

内容は、日本の傀儡政権と目されていた汪精衛政権の幹部(梁朝偉)を暗殺するため、女子学生が、スパイとして社長夫人になりすまして、幹部に近づき、関係を持ち・・・という話。見所としては、セットで、当時の上海や香港が作られているのが面白いのと、1940年代の上海女性の旗袍、化粧、髪型などのファッションが美しいのと、湯唯の演技。梁朝偉は、残念ながら、あまり存在感がない。見慣れてしまったせいか、北京語を話しているからか、老けたからか、王家衛の映画の印象が強いせいか、役柄にあっていないのか。やはり、香港で広東語を話していないと、借りてきた猫のようだ。(この作品は、本人が北京語を話しているらしく、下手だが、かなり頑張っていて、少なくとも広東語なまりはほとんど消えている。ちなみに、湯唯の広東語も微妙にネイティブでないとは分かるが、かなり上手い。上海語は、私は全然分からないので、不明。)

湯唯という大陸中国人の主演女優が、おそらくこの映画の一番の見所。質素ななりで学生を演じている時は、そんなに美人でもないのに、化粧して旗袍を着ると、驚くほど変わる。それが凄い。

 


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